原発Q&A(3) 「福島第一から放出された放射能は原爆の何倍?」  2011年9月4日

【Qさん】
 博士のお話(Q&A(1))では、福島の事故では広島原爆の数十発分の放射能が出た、とありました。しかし、8月27日、福島第一で大気中に放出された放射能は、セシウム137で広島原爆の168.5倍、ヨウ素131で2.5倍に達していたとする原子力安全保安院の資料が公表されました。どちらが正しいのですか?
【A博士】
 保安院の資料の一部を次の表で示します。A列は福島と広島で共通の核種だけを選んでいます。
画像

公表されたベクレル単位の放出量(C, Fの列)とB列の半減期を使い、放出原子のモル数は次式で計算できます。
(モル数)=(ベクレル数)×(秒単位の半減期)÷0.693÷6.02E+23
計算結果をDとG列に示します。
 次に、U-235の核分裂で生成される核種毎の割合が分かっているので、その割合で割り算したのがH列で、元来いくらのU-235が核分裂したのかを示します。H列の平均値は3.58モルで、これに原子量をかけた0.84kgが広島原爆で実際に核分裂したU-235の質量となります。なお、爆弾には約50kgのU-235が詰められていました。
 他方、同様にして福島原発で放出された核種を生み出したU-235のモル数をE列に求めていますが、核種毎にひどくばらついています。原爆では瞬時に核分裂が終わり、全てが放出されるのに対して、原子炉では次の特徴があるからです。
1)ガス状の原子(Xe, I)、あるいは沸点が比較的低いBaが放出されやすく、融点の高い金属などは放出されにくい。
2)放射性物質は原子炉運転中に蓄積され、半減期の長いもの(Cs, Sr)の存在比が高まる。原子炉停止後の時間で半減期の短いものは急速に減っていく。
3)原子炉の状態、および、放出経路と形態(ベント、または圧力抑制室の容器破損で放出)で核種が異なる。表では割愛しているが、格納容器の損傷が顕著である2号機ではPuの放出量が1,3号機より50倍程度も多い。
 こうした事情で、表のI列に示すように、半減期が長く原子炉にたくさん蓄積され、ガス化しやすいCs-137は原爆の168倍放出されたが、半減期の短いヨウ素は2.5倍であったということです。なお、Cs-137の放出量はチェルノブイリ原発事故の約6分の1です。
 福島第一ではCs-137の1.2倍のベクレル数のCs-134が放出されています。Cs-134は原爆では生成されませんし、チェルノブイリ原発事故よりも相対的に高くなっている。このため、福島では事故後数年間、Cs-134の崩壊で放射能レベルは減少するが、その後は半減期が長い多量のCs-137がいつまでも残ります。広島原爆よりはるかに深刻な土壌汚染が継続するおそれがあります。 
 8月はじめの時点では詳細なデータが分からず、Cs-137のみで評価して原爆の50~100倍となったので、数十発分と書いておりました。いずれにせよ、原子力安全保安院の資料は推定に基づいている部分があり、将来、原子炉の内部の様子が分かれば、放出量の修正もあるでしょう。

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